水銀灯が廃止に!水俣条約のポイントと工業界で求められる対応策

2021年から一般照明用の水銀灯の製造・輸出入が禁止されていることはご存知でしょうか?その背景にあるのが、2013年に国連で採択された「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」です。

現在、成長と発展を損なうことのないように、工業用の水銀灯は規制されていませんが、欧米諸国では人々の健康や環境を守るために工業利用も「脱水銀」が進んでおり、日本も将来的には規制される可能性が高いです。

本記事では、水俣条約のポイントと企業に求められる対応策について解説します。

目次構成

水銀灯廃止の背景にある「水俣条約」

工場や体育館、駐車場など、かつては多くの施設で水銀灯※が使われていましたが、2021年からは一般照明用の水銀灯※の製造および輸出入が禁止されています。本章では、水銀灯廃止の背景にある「水俣条約」の概要や規制対象、規制内容について見ていきます。

※水銀灯とは・・・水銀蒸気を封入したガラス管内のアーク放電(気体中の放電の一種)による発光を利用した照明器具。高圧のものは強い光を発するため屋外や倉庫、工場などの照明に、低圧のものは強い紫外線を持つため殺菌灯に使われることが多い。

水俣条約の概要と規制対象

「水俣条約」(正式名称:水銀に関する水俣条約)は、日本の水俣病の教訓を背景に、2013年10月に国連で採択・署名された国際条約です。水銀の製造、輸出入、利用、人為的な排出を規制し、人々の健康と環境を守ることを目的としています

日本では2017年8月から施行されており、経済産業省の監督の下で水銀含有製品の製造や輸出入が段階的に厳しく規制されるようになりました。そして、2021年以降は一般照明用の水銀灯の製造・輸出入が禁止となっています

水銀灯の製造が禁止された主な理由は、水銀の有害性にあります。水銀は環境や人体に悪影響を及ぼす有害物質であり、蓄積性や生物濃縮性の問題が認識されています。特に、胎児や新生児など発達途上の神経系に有害であり、食物連鎖を通じた野生生物への影響も大きな問題となっています。

こうしたことから、世界的な取り組みを通じて排出の削減が求められており、水俣条約の採択に至りました。

 参考(外部リンク):環境省「「水銀に関する水俣条約」の概要」

水銀灯における水俣条約の規制内容

水俣条約に基づき、2021年以降は一般照明用の水銀灯(特定水銀使用製品)の製造・輸出入が原則廃止となっています。主な規制内容は以下の通りです。

<規制内容>

  • 一般照明用の高圧水銀ランプは、2021年から製造・輸出・輸入を禁止。
  • メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、特殊用途ランプ(紫外線ランプなど)は規制対象外。
  • 蛍光ランプは、水銀封入量を規制。水銀封入量が規制値(5~10mg)以下の蛍光ランプは引き続き製造・販売が可能。

なお、工業用水銀灯に関しては、現時点(2024年6月)では規制はなく、使用されている状態です。工業用水銀灯が直ちに規制されることは考えにくいものの、一般照明用はすでに規制されていることや、一部の先進国では工業用の水銀灯が既に規制されていることから、将来的には工業用の水銀灯も規制される可能性が高いと考えられます

そのため、工業用の水銀灯を使用している企業は将来を見据えた動きにも注目する必要があります。

 参考: 経済産業省HP

工業用水銀灯も規制対象に。脱水銀が進む欧米諸国

水俣条約が採択されたこともあり、世界的に脱水銀に向けた動きが加速しています。日本では一般照明用の水銀灯が禁止されていますが、国によっては工業用水銀灯も含め、厳格な規制が進んでいる状況です

工業用の水銀灯も含めて規制がされている主な国・地域は以下の通りです。

国・地域 規制内容
欧州連合(EU) ・水銀を含む電気・電子機器の使用が厳しく制限
・わずかな例外を除いて工業用製品も規制
アメリカ ・工業用水銀灯を含め、水銀の使用と排出に関する厳しい基準を設定
カナダ ・特定の工業用途の水銀灯を制限

欧州連合(EU)では、RoHS指令において水銀を含む電気・電子機器の使用が厳しく制限されており、わずかな例外を除いて工業用製品も規制されています。この規制は水俣条約に基づいており、2020年以降、化粧品、温度計、各種電池、一部のランプなど、水銀を含む製品の製造・販売が禁止され、工業プロセスでの利用も制限されています。

アメリカ合衆国では、EPA(環境保護庁)のClean Air Act(大気清浄法)やその他の環境規制で、水銀の使用と排出に関する厳しい基準を設けており、工業用水銀灯も含まれています。

カナダでも、環境規制機関にて、国内の水銀使用に関する制限を設けており、特定の工業用途の水銀灯が含まれています。

このように欧米の先進国では、工業用の水銀灯にも規制がかかっており、前述したように今後は日本においても規制がなされる可能性があります。そこで、水銀灯の代替製品であるUV製品の利用を検討することがおすすめです

水銀灯の代替品に関する情報収集をすることが重要

水銀灯の代替品として、脱水銀製品の普及が進んでいます。エクセリタスノーブルブライトジャパンでは、「水銀フリー」製品の開発を積極的に進めております。例えば、食品パッケージ向けBlueLight Flashシステムの提供を開始し、さらに、UVC-LEDやその他のUVC光源の開発など、幅広い殺菌紫外線光源の提供を目指しております。

特に、UV殺菌灯を活用している食品産業では、より強い殺菌能力を有しながら脱水銀も実現するUVを活用した殺菌システムが、ドイツを中心とする欧州市場で採用され始めています。

今後求められるUV殺菌について知りたい方は、殺菌における欧州の動きとともに解説した以下の資料をご覧ください。

 【容器充填機械メーカー向け】今後求められる食品包装材の殺菌とは】

また、UV殺菌をはじめ、UVLED全般の基礎知識について知りたい方はUVLED導入ガイドブックをご覧ください。

 【基礎知識】UV硬化におけるUVLEDの導入ガイドブック