オンデマンド生産のメリットとそのソリューション

オンデマンド生産についてご紹介します。オンデマンド生産は何を可能にし、どのような分野で特に導入されているのでしょうか。また、特定の分野においてオンデマンド生産を可能にしたのはどのようなソリューションなのでしょうか。

概要

オンデマンド生産とは

「オンデマンド(On-Demand)」という言葉は、インターネットの普及とともに使われるようになった産業用語です。「デマンド(Demand)」は「要求」を意味し、「オンデマンド(On-Demand)」で「要求に応じて」「要求があればすぐに」といった意味となります。

オンデマンドという用語は、さまざまな分野で使われています。テレビ放送においては、それまでワンウェイだったのに対しインターネット接続による双方向の送受信でオンデマンド放送が実現しました。同様に、デジタル化された書籍を読みたいときにダウンロードして読むシステム、オンデマンド出版も普及しています。また、はがきや印刷物などを、インターネット上で注文を受けてすぐに印刷し届けるサービスは、オンデマンド印刷と呼ばれています。

このように、「要求に応じて」サービスや製品が提供される仕組みのことをオンデマンドと言います。そのなかでも、製造業において「要求に応じた」生産を行うことが「オンデマンド生産」です。「必要なものを必要なときに必要な数だけ」というジャストインタイム方式も、広い意味でのオンデマンド生産に含まれます。

顧客の要求が複雑化していくこれからの時代に、ものづくり企業が求められるのは、自社の強みを最大限に生かした生産活動による製品の供給です。それと同時に、顧客の需要に応えられる柔軟性とスピードも必要とされます。こういった顧客の需要にフレキシブルに対応する生産方式が、オンデマンド生産です。

オンデマンド生産のメリット

オンデマンド生産方式を採用する企業が増えているのには、どのような理由があるのでしょうか。それにはオンデマンド生産に次のような特徴があり、それぞれの業界においてメリットがあるからです。

リードタイム短縮

製品を作り在庫しておく生産方式では受注に対して出荷されるため、生産開始から出荷までの時間は長くなります。これに対しオンデマンド生産では、顧客からの受注に応じて生産を開始するためリードタイムを短縮することができ、早いサイクルでの資金化も可能となります。

需要予測が不要に

要求に応じて生産するオンデマンド生産では、市場や顧客の需要予測をする必要がありません。求められた必要数を納めるというわかりやすい納品方式となります。需要予測にかけていたコストを削減できるだけでなく、予測に対する誤差というリスクもなくすことができます。

在庫削減

需要予測が不要で、在庫をストックしておく必要もないため、在庫を限りなく減らすことができます。在庫管理にかけていたコストを削減できると同時に、仕様変更や需要減少などの理由から不良在庫化してしまうリスクも回避できます。

小ロット生産によるニーズへの対応

オンデマンド生産の最も大きなメリットと言えるのが、需要への柔軟性と対応力の高さです。顧客の要求数を生産する方式のため在庫を大量に抱えることもなく、その時その時のニーズに合わせた生産が可能です。市場や顧客の需要にマッチした生産活動を続けていくことは、自社の強みをさらに伸ばしていくことにつながります。

オンデマンド生産を可能にした技術

オンデマンド生産はさまざまな分野で導入されていますが、特に印刷分野において取り入れられています。この印刷分野でのオンデマンド生産において効率を大きく左右する要素が、印刷工程での乾燥における加熱プロセスです。

そもそもオンデマンド生産は、どのような分野でも製品一つあたりの製造コストは高くなりがちです。それは、断続運転によるウォームアップやクールダウンタイムがムダにつながり、コストがかさんでしまうためです。これは印刷分野でのインク乾燥でも同じで、一度冷えたヒーターを再びウォームアップするための時間と消費電力が大きなムダを生んでいました。しかし近年の赤外線ヒーターでは、ウォームアップに要する時間はわずか数秒です。これは小ロットごとにオンオフを繰り返すオンデマンド生産にとても適したヒーターと言えます。

このウォームアップ時間の短さは、印刷分野だけでなくさまざまな分野においても大きなメリットとなります。樹脂の射出成形や真空成形、プレス成形、高張力鋼板の熱間プレス成形、基盤製造工程など、加熱が必要となるプロセスすべてにおいても同様の効果が期待できます。

また、光アプリケーションのウォームアップ時間短縮が進んでいるのは、赤外線だけではありません。UV硬化のような紫外線照射を要するプロセスにおいても、瞬時に硬化を可能とするUVランプが開発されています。これによりUV効果の分野でも最小コストでのオンデマンド生産が可能となっているのです。

オンデマンド生産と光アプリケーション

オンデマンド生産とはどのような生産方式か、それによってどのようなメリットが生まれるのかを解説しました。

加熱工程を必要とするさまざまな分野において、ウォームアップ時間とコストの関係は長年の課題でした。しかしそれも、光アプリケーションの発達により解消されつつあります。こうしたことから、現代のオンデマンド生産が可能となったのは、輻射(ふくしゃ)技術の発達が大きくかかわったと考えることもできます。「要求に応じて」素早く加熱を開始できる赤外線ヒーターや、瞬時に硬化を可能とするUV-LEDなどが、オンデマンド生産を支えているのです。