自動車のボディに対するアルミという材質の存在

自動車の研究開発において、軽量化は常に取り組まれてきました。近年では地球環境保護への取り組みから、自動車のさらなる低燃費化が重要な課題です。この低燃費化実現のためにも、自動車の軽量化は研究が続いています。

自動車の軽量化の手段として、ボディ材質にアルミの利用が検討されています。アルミが自動車のボディにおいて、どのように使われているのかご紹介します。

概要

アルミとはどんな材質か?

日々生活をするうえでよく耳にするアルミとはどのような材質なのでしょうか? その特徴と使用例の一部をご紹介します。

アルミの材料特性

アルミの材料特性としてまずあげられるのは、軽さと強さでしょう。一般的によく使われる鉄と比べると、比重は約1/3、比強度は約2倍となります。その強度にかかわらず加工性に優れ、塑性加工しやすいことからさまざまな形状に製造することができます。また、熱と電気の伝導率の高さも特徴の一つです。熱伝導率は鉄の約3倍、導電率は銅の約2倍もあるのです。

材料として好まれる特性として、ほかにも耐食性の高さとリサイクルのしやすさがあります。アルミは空気中で酸化被膜を生成することから、腐食を防止することができます。そしてアルミは重金属のような毒性はありません。無害無臭で衛生的であり、人体や土壌を傷めることはないことから産業廃棄物とならず、低コストで資源としての再利用が可能になるのです。

私たちの周りにあるアルミの使用例

アルミは私たちの日常生活のさまざまな場面で使われています。アルミの使用例として最も見る機会が多いのは1円硬貨ではないでしょうか。正式には「1円アルミニウム貨幣」と呼び、アルミニウム純度100%です。ほかにも耐食性の良さをいかし、清涼飲料水の缶では樹脂コーティングが施されたアルミが使われています。また、アルミは素地でも美しい金属として知られています。この特性をいかし、オーディオの外形に使われることもあります。

ご紹介したような小さいものだけでなく、航空宇宙機器や船舶のような大型のものにもアルミは使われます。外形にも使われますが、そこに使われるねじやギヤなどの機械部品にも使われているのです。そのほかにも毒性のなさをいかし食品の包装や医療機器にも多用されます。あげればきりがないほどアルミは私たちの周りの多くのものに使われているのです。

昔は自動車のボディにあまり利用されていなかったアルミ

自動車のボディには従来鉄が一般的に使われ、レーシングカーや高級車のような一部の自動車を除きアルミはあまり使われていませんでした。その理由は自動車のボディがモノコック構造で製造されていた点にあります。

モノコック構造とはフレームとボディを一つの構造として製造する方法です。モノコック構造が登場する前はフレームの上にボディが乗せられた構造でした。しかし、モノコック構造によりフレームとボディを一つにすることで、低コストかつ高強度、軽量で大量生産が可能になったのです。

一方で、モノコック構造は非常に複雑な形状となるため、使われる材料には加工性のよい素材であることが求められました。アルミも加工性には優れるのですが、一方で溶接が難しい材料でもあります。アルミを鉄と同じように溶接するには多くのエネルギーが必要になります。自動車のボディは溶接により製造されるため、溶接が難しいアルミはボディの材料としてあまり使われていませんでした。そこで、加工性にも溶接性にも優れる鉄が一般的に使われるようになったのです。

現在における自動車のボディへのアルミの利用

自動車のボディではあまり使われることがなかったアルミですが、ボディ以外の部分、エンジンやホイール、トランスミッションなどは以前からアルミも使われていました。しかし近年ではアルミの鋳造技術の進化やアルミの溶接に代わる接合方法の開発などにより、ボディへの利用は着実に増加傾向にあります。ヨーロッパの自動車は2割以上がアルミ製フードを採用されているといわれています。

実際にアルミがボディに採用された自動車として以下があります。

  • アウディのR8やA8
  • ランドローバーのレンジローバー
  • フォードのF150
  • ホンダのNSXやインサイト

ここであげた自動車は一例であり、すでに生産されている自動車、現在開発中の自動車とアルミのボディへの利用は進んでいます。

アルミの利用はこれからも進められる

日本は海外に比べると電気料金が高いことから、精製に多くの電気が必要とされるアルミは、海外ほど積極的に自動車のボディへの利用が進んでいません。しかし、アルミは設計による形状自由度が高く、溶接されないことから精度も高い傾向にあります。これからの自動車の軽量化において、重要な材料となる可能性が十分にあります。これからの研究開発がさらに進めば、ボディの材質がアルミという自動車がより一般的になり、私たちにとってより身近なものになっていくでしょう。

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