工業用カーボンヒーターの特徴と用途、ハロゲンヒーターとの違いとは?

工業用赤外線ヒーターのなかにも種類があります。そのなかでも、カーボンヒーターとハロゲンヒーターにはどのような違いがあるのかご存じでしょうか。本稿ではカーボンヒーターの特徴と用途をご紹介します。

概要

カーボンヒーターの特徴と加熱原理

赤外線を放射して加熱するヒーターには、使用する発熱体によりいくつかの種類があります。そのなかには石英管ヒーターやハロゲンランプもありますが、発熱体としてカーボン(炭素繊維)を使用しているのが、カーボンヒーターです。

導電体となる炭素繊維は、石英管の中に不活性ガスとともに封入され、これに電気を流すことで赤外線の放射が起こります。放射された赤外線が物質に届くと、反射・透過・吸収の3つにエネルギーの行き先は分けられます。このうち吸収されたエネルギーが物質の持つ分子運動と共振したとき、分子は摩擦熱を生み出します。これがカーボンヒーターを含む赤外線ヒーターが、ものを加熱する仕組みです。

赤外線ヒーターのなかでも、ハロゲンヒーターは照明用として開発され可視光として、多くのエネルギーを放射します。これに比べ、カーボンヒーターではより多くのエネルギーが赤外線領域で放射されます。また、カーボンヒーターから放射される赤外線は、水が吸収しやすい波長であることから、水を多く含む物体を加熱する際にも高い効率を発揮します。

カーボンヒーターのメリット

カーボンヒーターは、赤外線ヒーターのなかでも効率よく赤外線を放射することができます。カーボンヒーターを使うことで得られるメリットとして、次のような点があげられます。

媒介を必要としない

カーボンヒーターは赤外線を照射することで対象を加熱するため、赤外線が対象に到達した時点から加熱が始まります。これは空気を媒介として加熱する対流式加熱では不可能な速さで、カーボンヒーターの大きなメリットのひとつです。また、空気を温めてからその熱を対象に伝える場合、気温が低ければそれだけ多くのエネルギーを必要とします。しかしカーボンヒーターではその必要もありません。

発熱体自体の熱保有量が少ない

発熱体に使われるカーボンは、その特性からシート状でも十分な強度を発揮します。カーボンをシート状に加工し発熱体とすることで、発熱体自体の熱保有量を大幅に小さくすることが可能となります。

発熱体の熱保有量が小さいことは、発熱体がより早く発熱を始めることを意味します。これにより、重いコイル状発熱体を持つ赤外線ヒーターに比べ、シート状を採用したカーボンヒーターではより早い加熱が可能なのです。

従来の中波長系赤外線ヒーターでは1~2分かかっていた立ち上がり時間が、3~4秒で1200℃に到達可能と、ハロゲンヒーターのように飛躍的な立ち上がり時間の短縮を実現しています。

赤外線放射量が多い

ハロゲンヒーターはオレンジ色の光に輝き、とても多くの熱を発しているように見えます。しかしこれは、可視光線域の波長を多く出していることの裏返しでもあり、可視光線外領域、つまり赤外線の放射量は減少していることを意味します。

ハロゲンヒーターのピーク波長は1μmと可視光線に近い領域にあるのに対し、カーボンヒーターは2~4μmの中波長域赤外線を放射します。放射するエネルギーにより多くの赤外線が含まれるカーボンヒーターは、効率よく対象を加熱することができるのです。

水分の加熱・乾燥に適している

水に最もよく吸収される赤外線の波長は、3~3.5μmほどです。2~4μmの波長を持つ赤外線を放射するカーボンヒーターは、水または水分を多く含むものの加熱にとても適しています。

例えば、インクジェット印刷に使われるインクは水性であり、水分を多く含みます。この乾燥にカーボンヒーターを用いることで、インクは効率よく加熱され、紙はあまり加熱されません。急速なインク乾燥が可能になるだけでなく、紙の損傷を抑えることもできるのです。

エネルギーの無駄が少ない

このように、発熱体の熱保有量が少なく立ち上がり時間が短いこと、電気エネルギーをより多くの赤外線に変えることは、すべて省エネにつながります。

カーボンヒーターの用途

カーボンヒーターはその特性から、さまざまな分野で活躍しています。代表的な用途には次のようなものがあります。

  • インクジェット印刷後の乾燥
    カーボンヒーターは水分の加熱に適していることから、効率よくインクを乾燥し紙の損傷を抑えます。
  • 食品工場の加熱調理設備
    食品も水分を多く含むものがあります。高効率な加熱が可能なカーボンヒーターは、加熱調理ラインのサイクルアップにも貢献しています。

カーボンヒーターは幅広い分野へ

カーボンヒーターがどのような原理で加熱しているのかに触れながら、カーボンヒーターの持つ特徴とメリットをご紹介しました。

カーボンヒーターは、その特性と効率の良さから印刷分野でのインク乾燥用途をはじめ、暖房や調理器としても活躍の幅を広げています。レスポンスの良いオン・オフを繰り返すことができることから、さらに多分野での応用が期待されています。

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