プレスリリースヘレウス・プレシャスメタルズ 貴金属予測2024: 金は引き続き記録的な水準に

令和4 年12 月13 日

  • 銀も金に続き上昇
  • パラジウムは引き続き市場の圧力を受ける展開に
  • プラチナは早晩パラジウムよりも高価になる予想
  • イリジウムの基本的な見通しは底堅い
ヘレウス・プレシャスメタルズ 貴金属予測2024: 金は引き続き記録的な水準に
ヘレウス・プレシャスメタルズは、金は過去最高値に達するが、経済成長の鈍化によりPGM価格はさらに下落する可能性があると予想。 (出典:ヘレウス・プレシャスメタルズ)

2023年12月12日、ドイツ・ハーナウ - 世界最大の貴金属リサイクルメーカーかつトレーダーであるヘレウス・プレシャスメタルズによると、金の価格は来年も上昇を続け、新たな記録に達するとのこと。ヘレウス・プレシャスメタルズ トレーディング部門の責任者であるヘンリック・マークスは年次貴金属予測発表会において、「米連邦準備理事会が利上げのサイクルを終了し、早ければ春にも利下げを開始する可能性があるとの確信が高まっており、金の価格は上昇するであろう」と述べた。

金利引き下げにより、金などの無利子資産への投資の魅力は高まり、通常であればドルの価値は下落する。米国の通貨安は一般に金価格を下支えし、貴金属は主にドル建てにて取引がなされるため、ドル安により世界市場で貴金属は安くなり、需要は高まり、故に貴金属価格は上昇することになる。「米国債券市場の高利回りと米ドル高にも関わらず、金は非常に好調。これは明らかに上昇傾向を示している。」中央銀行やETF投資家による継続的な購入も金の価格を下支えするだろうと予測。また、インドにおける宝飾品の旺盛な需要も追い風となる見込み。更には、投資家は現在の危機に鑑み安全な避難先として金に目をつける可能性がある。ヘレウスは、トロイオンスあたり1,880ドルから2,250ドルの範囲と予測している。

銀も金に続き上昇

へレウスはまた、銀の価格も来年上昇すると予想しているが、金ほどではないと見込んでいる。金利の低下とそれに伴う米ドル安が銀の価格を下支えするが、一般的には利下げは通常経済の悪化を示す。その様な環境下でも中国での太陽光発電向けの需要は引き続き旺盛であることが予想されているが、これだけでは経済低迷による他の業界での需要減少を補うには十分とは言えない。更に投資家は予想される金利の方向転換に反応し、金と同様に銀も購入すると思われる。ヘレウスは、価格帯をトロイオンスあたり22ドルから29ドルと予測する。

プラチナ市場では不足が続いているにもかかわらず、世界経済の減速による下押し圧力により、価格は今年と同様の取引範囲にとどまる可能性が高い。宝飾品業界は需要が弱いこともあり、価格を下支えする要因とはなりえない。プラチナの価格は、不採算鉱山の閉鎖などによる供給量不足によってのみ下支えされる可能性がある。現段階では、主にディーゼル車用排気触媒コンバーターに使用されるこの金属は、金に比べて安価となっている。金価格の回復もプラチナ価格のわずかながらの上昇トレンドを形成することに役立つ可能性がある。ヘレウスによると、プラチナの価格帯はトロイオンスあたり800ドルから1,100ドルの範囲と予測し、水素産業からの需要の増加もあり、2024年以降価格は上昇するとしている。

パラジウムは引き続き市場の圧力を受ける展開に

最近の強い市場圧力にさらされているパラジウム価格はさらに下落する可能性がある。80%以上を占めるパラジウム最大の市場である自動車業界において、電気自動車の更なる市場シェア獲得、パラジウムをプラチナに置き換えた自動車触媒コンバーターの使用が増加することで、その結果、これらすべての要因が組み合わさって、自動車生産向けの伸びは鈍化する可能性があり、需要は減少すると予測。この需要の減少は来年もパラジウム価格に下げ圧力をかけ続けると予想される。ヘレウスは、この範囲をトロイオンスあたり700ドルから1,200ドルと予測している。

ロジウム価格は正常化、ルテニウム価格は下落

ロジウムの価格は自動車産業の需要に大きく依存しており、トロイオンスあたり3,500ドルから6,500ドルの範囲で推移するものとみられる。この範囲は2020年から2022年にかけて価格がピークに達する以前の水準になった現在、より「正常な」ロジウム市場を反映している。前年比の純需要の減少により、ロジウム価格に下げ圧力がかかる可能性は高いが、南アフリカの不採算鉱山の閉鎖の可能性による供給の減少は中長期的にはいくらかの上昇余地をもたらす可能性がある。南アフリカは毎年世界のロジウム供給量の80%以上を生産している。

ルテニウムの市場での余剰は来年縮小する見通しだが、経済の減速が価格に対する重しとなっている。南アフリカで初めて小規模な立坑が閉鎖されたため、供給は減少すると推測される。エレクトロニクス及び化学品部門の需要は前年比で増加する可能性があるが、消費はパンデミック前のレベルを下回ると予想される。へレウスの専門家らは、価格帯はトロイオンスあたり350ドルから600ドルの間と予想。

イリジウムの基本的な見通しは底堅い

イリジウムは基本的に引き続き堅調との見通しで、供給は見込みを下回るリスクがある。しかし経済の見通しが予想通りに悪化する場合には価格が下落する可能性はある。スパークプラグや電化製品の需要が若干減少しても、電気化学用途の需要の増加により相殺される見通し。グリーン水素の製造におけるイリジウムの需要は増加しているが、へレウスが固体高分子型水電解(PEM)用に開発したルテニウムベースの触媒は、今後数年間で希少なイリジウム市場への上昇圧力を軽減する役割を担うものと思われる。へレウスはイリジウムの価格が2024年にはトロイオンスあたり4,000ドルから6,500ドルになると予想する。

ヘレウスによる貴金属取引価格予測の概要:

貴金属 トロイオンスあたりの価格変動幅
1,880ドル~2,250 ドル
22ドル~29ドル
プラチナ 800ドル~1,100ドル
パラジウム 700ドル~1,200ドル
ジウム 3,500ドル~6,500ドル
ルテニウム 350ドル~600ドル
イリジウム 4,000ドル~6,500ドル

免責事項

ヘレウス貴金属予測 2024 は、ヘレウスおよび SFA(Oxford)Ltd.が信頼できるものと捉えている情報源から取得した情報を基に作成されましたが、独自の検証はなされていません。 ヘレウス貴金属予測 2024の内容は、細心の注意を払い作成されていますが、ヘレウスおよび SFA(Oxford)Ltd.が提供された情報の正確性、完全性、および話題性について保証するものではありません。更に見通しに関するすべての記述を含む提示された貴金属に関する予測は、この文書が作成された時点でのヘレウス及び SFA(Oxford) Ltd. の予想と特定の仮定に基づいています。実際の結果は、ヘレウスおよびSFA(Oxford)Ltd.が制御できないリスク、不確実性、その他の要因により大きく異なる場合があります。従って、予測が実現するという保証はなく、ヘレウスは予測を更新したり、新しい状況や展開に合わせて予測を調整したりする義務を負いません。

ヘレウス・プレシャスメタルズについて

貴金属サービスおよび製品を提供するリーディングカンパニーであるヘレウス・プレシャスメタルズは、貴金属地金取引から貴金属製品のご提供、その回収からリサイクルまで、バリューチェーンを網羅しており、金と銀に加え、すべての白金族金属に関する広範な専門知識を有しています。

ヘレウス・プレシャスメタルズは、世界15拠点で3,000人の従業員を擁し、自動車、化学、半導体、医薬品、水素、宝飾など、多くの産業に不可欠な幅広い製品ポートフォリオを提供しています。

ヘレウス・プレシャスメタルズは、2025 年までに業界で初めてカーボンニュートラルを実現する企業となります。

ヘレウスについて

ヘレウスグループはドイツ・ハーナウを本拠地とする広範囲で多角的に世界をリードする家族経営のテクノロジー企業です。起源は1660年にヘレウス家が開業した薬局まで遡ります。今日では、ヘレウスグループは、ビジネスプラットフォームとして材料及びリサイクル、ヘルスケア、半導体及びエレクトロニクス、工業といった分野を有し、多様で積極的な活動を行い、材料や技術に関する幅広い専門知識に基づき、お客様に革新的な技術とソリューションをご提案しています。

2022年の会計年度には、ヘレウスグループは総売上高291億ユーロ(約4兆6176億円*)を計上しました。世界40ヵ国に約 17,200 名の社員を擁するヘレウスは、ドイツにおける「ファミリー企業上位10社」の一社に選ばれ、グローバル市場で業界をリードする企業として活躍しています。

(*日本円レートは1ユーロ=158.68円で計算しています。)