ヘレウス、「エアロゾルデポジション」コーティング法を工業用に実用化

2021年6月21日 ドイツ・ハーナウ

エアロゾルデポジション
エアロゾルデポジション:材料粒子をキャリアガスで加速し、基材に塗布します。

ヘレウスはエアロゾルデポジションコーティング法の適用範囲を拡大します。日本で開発されたこの技術は、これまで主にアジアでプラズマエッチングチャンバー部品のコーティングに使用されてきました。このコーティング法には多くの利点がありますが、これまで他の業界にはほとんど適用されていませんでした。「しかし、バイロイト大学などによる実現可能性の研究では、エアロゾルデポジションが他の用途に対してもメリットを有することが示されています」と述べるのは、ヘレウス・ハイパフォーマンスコーティングスの責任者、イルカ・ラック博士。博士によると、そのような用途には、センサー技術、パワーエレクトロニクス、バッテリー、医療技術などがあります。

「私たちは過去2年間、産業規模での生産に向けたプロセスと機械の最適化に集中的に取り組んできました。その結果、私たちは実現可能性調査から量産に至るまでお客様にサポートを提供できる唯一のサプライヤーとなりました」と、ラック博士は述べています。この技術は、従来の方法では要求される品質が得られない、あるいは望むコーティングがまったく形成できない場合に、とくに有望です。

エアロゾルデポジションは、薄い材料層を形成するプロセスです。材料粒子はキャリアガスによって秒速数百メートルの速度まで加速されます。そして、その粒子が表面(基材)に衝突し、閉塞膜が形成されます。


高機能性コーティング剤

エアロゾルデポジションは、使用するコーティング材料や基材に制限がありません。ラック博士は、「私たちはすでに、金属とセラミックの両方をコーティングに使用しています。その使用の唯一の要件は、材料が加工用粉末として入手できることです」と述べています。

その結果、得られる厚さ1 µmからのコーティングは、多量材料に近い材料特性を有するという特徴を持っています。同時に、高い密度と付着性も示します。ラック博士は「良好な付着性は基材と層が接する部分で化学結合を形成しているからです」と述べています。

エアロゾルデポジションのコーティングは、使用する材料に応じて、電気絶縁層、熱伝導層、腐食・摩耗保護、付着性促進、表面仕上げ、さらには自立金属層として使用することができます。


新しい材料の組み合わせ

熱蒸着などのコーティング技術とは異なり、エアロゾルデポジションは室温で行うことができるため、耐熱性のない材料や基材に最適です。基材に付着する際に材料や相の変態は起こりません。このため、コーティングと基材のまったく新しい組み合わせが可能になります。ヘレウスではすでに、鋼、セラミック、ガラス、プラスチック、シリコン、リン化インジウムウェハーなど、さまざまな基材の試験に成功しています。


プロセス上のメリット

スパッタリングや熱蒸発のような方法は高真空で行わなければならず、技術的に複雑で時間がかかります。エアロゾルデポジションは、多くの場合、より迅速なだけでなく、低真空かつ室温で行うことができます。このため、この新しい方法は高デポジションレートを実現します。