ヘレウスのエアロゾルデポジションにより防腐コーティングの開発が加速

2022年3月8日 ドイツ・ハーナウ

エアロゾルデポジション

EOS Biomaterials社は、医療市場向けのコーティング開発にヘレウスの研究開発設備を利用しています。同社の技術は外科用インプラントや創傷治療に使用することができます。同社の特許取得済みコーティングには防腐作用と抗生作用があり、抗生物質の徐放を可能にし、エアロゾルデポジション法では、粉体製剤を適用することもできます。同社の会長であるリー氏は、「私たち独自のエアロゾルデポジション装置により、今後さらに短いサイクルで新材料や材料の新しい組み合わせをテストおよび最適化できるようになるでしょう」と述べています。

医療技術には防腐コーティングの適用分野が数多くあります。例えば、インプラントや医療器具への適用が可能です。通常このコーティングは活性金属成分(銀など)とセラミックなどのキャリア材料から作られます。活性表面が大きければ大きいほど、防腐効果は高くなります。しかし、活性成分とキャリア材料の適切な材料比率は、コーティングが望ましい防腐効果を発揮するかどうかだけでは決定できません。原材料の金属はコストを増減させる要因でもあるのです。そのため、メーカーは最適な混合比率を見極めようと努力しています。リー氏は、「私たちは開発契約の一環として、ヘレウスの材料に関する専門知識をすでに利用しています。私たちの医療用コーティングの専門家は、試験、分析、コンサルティングを通じて、粉体開発のサポートを受けています。」と述べています。

設備はドイツで製作され、新北市のEOS Biomaterials社へ輸送されます。300×50 mm2までの領域と軸対称の製品のコーティングが可能です。ヘレウス・ハイパフォーマンスコーティングスの責任者であるイルカ・ラック氏は、「設備とプロセスの堅牢性を鑑みると、エアロゾルデポジションはEOS Biomaterials社の開発目標に理想的に合致しています。非常に革新的な製品に取り組んでおられるので、この取り組みにおいてサポートを提供できることを非常に嬉しく思っています」と述べています。

エアロゾルデポジションの装置
エアロゾルデポジションの装置

エアロゾルデポジションを選ぶ理由

新しいコーティングを迅速に開発するためには、使用する方法ができるだけフレキシブルで扱いやすいものであることが必要でした。しかし、ほとんどのコーティング法は高温を必要とし、高真空条件下で行われます。一方で、エアロゾルデポジション法は室温で行われ、低真空条件しか必要としません。また、人体に有害な物質を使用しないので、取り扱いも簡単です。

高性能コーティングは、基材から剥離してはいけません。エアロゾルデポジションで作られたコーティングの優れた特性のひとつが、密着性がとくに高いということです。その理由は、基材とコーティングが接する部分で化学結合が形成されるからです。

他のコーティング方法では、使用する材料を加熱したり蒸発させたりする必要があります。このときの温度が材料を、さらには材料の特性を変化させる可能性があります。一方、エアロゾルデポジションは室温で行われ、基材への蒸着時に化学反応や相転移は起こりません。そのため、原料の特性はコーティングにおいてもほぼ維持されます。

エアロゾルデポジションで解決できる問題はこれだけではありません。複数の材料を組み合わせる場合、コーティングプロセスはより複雑になります。多くの場合、コーティングの成分(この場合は金属とセラミック)の特性は非常に異なります。例えば、融点が異なるために、従来の方法では同時に塗布することができない、もしくはできても多大な苦労が強いられる場合があります。エアロゾルデポジションは、あらゆる材料や材料の組み合わせでコーティングを行うことができます。唯一の必要条件は、材料が粉末として用意されることです。

エアロゾルデポジションについて

エアロゾルデポジションは、薄い材料層を形成するプロセスです。材料粒子をキャリアガスによって秒速数百メートルの速度まで加速させることで、その粒子が表面(基材)に衝突し、閉塞膜が形成されます。

EOS Biomaterials社について

EOS Biomaterials社は、2021年3月にGenee Tech社によって設立されました。抗生物質の放出を制御する医療材料や生体適合性の高い抗菌性材料の開発に注力しています。